第一章 「テンキ」

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途端、何時ものようにみじんこは僕の腕に絡みつく。 そう、さっきからみじんこがゴキゲンだったのにはやはり訳がある。 僕は雨に濡れてしまうから傘を差す。 みじんこは濡れないように体をいつもより密着させてくる。 その様は朝から相合傘でいちゃつくバカップル・・・なんて、周りからは見えるだろうな。   しかし、傘を差してる時にくっつかれると歩き難い事この上ない。 こうまでされると傘くらい自分で差してもらいたいものだが、僕がみじんこに“返さなくては”助け合いは成立しない。甘えさせてやるのが僕の仕事だ。   と、僕とみじんこの関係について話しておこうか。 そう、みじんこと僕は運命を共にしている。みじんこは恋人としてだが、僕にとってはみじんこなんかどうでもいい。例えるならヤドカリとかイソギンチャクみたいなものだ。 余談だが、最近はカクレクモ(?)なんとかってのが有名らしい。    つまりは共棲だ。   僕は楽したいから。 みじんこは僕の事が好きだから。    一般的には噛み合ってはいけない要素二つが、両人の了承の下に成立しているのが現状。 そして死ぬまでそれが続く。   僕はみじんこに、みじんこの事を微生物以下の存在だと思っていると言ってあるし、みじんこはそれを理解しながら僕に尽くしてくれる。   文にして表してみても普通成り立つ以前の奇妙な関係なのだが、     「何かを利用して楽したい」 という僕に対してみじんこは 「僕が自分以外の誰かと接するのが許せない」   と、アンバランスと思いきや安定して崩れる事のない関係だ。 つまりは僕がみじんこに尽くさなくともいいのだが、片利共生は限りある僕のプライドというものが許さなかったのだろう。
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