第一章 「テンキ」

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お、雨が止んだみたいだ。 僕は雨が止むなりみじんこを優しく振り解き、傘をたたんでみじんこに差し出す。   『止んだ。』 傘を差し出す僕。 みじんこは歩を止めたまま立ち尽くしている・・・? そして姿勢を正したまま俯いて・・・? 『・・・チッ。』 刹那、みじんこは僕の傘をいきなりふんだくって走りだした。 ある程度僕の前を進んだところで制止し、その場で180度ターンした。   『は・・・、早く行こう!?』   急に何を言いだしたんだか。 みじんこはあれはあれで中々理解しがたい部分があるからな。 それに舌打ちをした様にも感じられた。 多分アレのサインだろうけど・・・ああ、今日は大変だな・・・。   兎にも角にも、僕達は予鈴の5分前には教室に着いた。   いつものように教室の中でもみじんこは僕の腕にひっついたまま離れない。 席が隣同士だから、教師がSHRを始めてもお構い無しでずっとくっついたままだ。 たまに小さな声で 「鷹秋くん・・・。鷹秋くん・・・。」 とも呟いている。 一応みじんこはこの高校では名の通った存在だ。 "生徒会長"と豪勢な肩書きさえ持っている。 やってできないことは無いと言われる程の完璧人間。 人徳・容姿・頭脳・運動神経。 全ての才と総ての運を謀らずとも手に入れた、言わば人類究極とでも冠するべきか。 なに、みじんこを僕の世話係に選んだのはただ単に僕に極端で隷属的な好意を抱いている人間だったからではない。 『使える』人間だという事も選定要素の大部分を占める重要項目だ。   ちなみに僕は生徒会の副会長を務めている。 まぁ、これは本当に名前だけの"肩書き"であるが。   何はともあれ、僕の指示でみじんこは生徒会長をやっている。 理由はその方が都合がいいから。"楽"だから。     そこでどうして僕が副会長なのかというと、 「出来るだけ離れたくない。ずっと一緒に居たい。一秒たりとも離れない。」 とみじんこが懇願したからだった。 僕の事になると言い出したら言うことを聞いてくれなくなるのは少々玉に瑕だ。 かくして僕達の学園生活最後の常日頃が始まったのであった。
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