死神の花嫁

2/51
前へ
/51ページ
次へ
  真夜中、いわく有りげに言うならば、丑三つ時とでも言ってしまおう。 数年に一度の台風上陸で、その地は荒れていた。 強風に木々はしなり、家の窓は軋み、庭の小物や看板までが飛ばされる状況。そこに大雨まで加わったものだから、さあ大変。すでに川沿いや海沿いの家屋には、床上浸水の魔の手が伸びていた。 「大丈夫か…しっかりするんだ…」 男が右手を握り締める相手は、産気づいた妊婦である妻。 「…っ!……!!」 額から大粒の汗を滴らせ、苦悶する妻の汗を拭ってやりながら、荒れる外と時計を気にしている。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

400人が本棚に入れています
本棚に追加