苛立ち

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毎日学校に行って友達とくだらない話をする。 そんな時一人じゃないけど、心の中はずっと独りだ。 はしゃいでみんなを笑わせようと必死になって、気づけば自分だけが虚しくなってる。 俺の父ちゃんと母ちゃんは共働きで、二人とも滅多に家に帰ってこない。 マンションは広いだけに余計寂しい。 だけど寂しいなんて言う相手もいないくらい毎日一人で過ごしてた。 そんな時間が続くと 「お前は独りぼっちだ」 って言われてる気になる。 だから俺は毎日学校の近くのじいちゃんの家に行くんだ。 じいちゃんの家には年老いた犬が1匹いる。 ばあちゃんが死んでから、じいちゃんが寂しくないようにと母ちゃんたちがもらってきたんだ。 名前は海(かい)。 俺の陸っていう名前からじいちゃんが付けた。 俺はじいちゃんに、学校での話をしながら海と遊ぶのが大好きだ。 じいちゃんや俺を一人にして、仕事に夢中な母ちゃんも父ちゃんも大嫌いだ…。 学校に行けば元気な奴のフリ。 みんな笑顔で過ごしてる。 誰一人寂しいなんて言う奴はいない。 教室の片隅で一人ぽつんと過ごしてるあいつ。 友達と話してるところなんて見たことない。 それなのにあいつでさえ寂しいなんて言わない。 言えないのか、寂しいのは俺だけなのか……。 マンションに帰ればいつだって叫び出したいくらいなのに。 笑顔であいつは言ったんだ。 『ちぃは寂しくなんかないよ?いつかママが帰ってきてくれるから』 イライラした。 何でそんなに幸せそうなのかわからなかった。 そんなあいつを見てたら自分がどんどん惨めになったから…。 だからあいつを傷つけてやろうと思ったんだ。 哀しいのは自分だけじゃないって自分を騙すために…。
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