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独りで冷めたご飯を食べ終えて、俺は海とじいちゃんに会うために川沿いを歩いた。
川から吹く風が心地いい。
ふと橋の下を見ると、二つの影が見えた。
立ち止まって目を凝らすと、それはちぃと知らないじいさんだった。
楽しそうに話をする二人。
ああ、だからあいつは寂しくなんかないんだ…って気づいて俺は走り出す。
モヤモヤした気持ちはいつの間にかちぃへの怒りに変わってた。
あいつは独りなんかじゃない。
あいつは…。
あいつは俺とは違うんだ…。
全速力でじいちゃんの家に向かう。
息が切れて苦しい。
それよりも、悔しさと哀しさで胸が苦しかった…。
涙が溢れて滲んだ視界に一つの影が映る。
「ワン!」
それは走り寄ってくる海だった。
海は俺に駆け寄って尻尾を振り喜びを体いっぱいに表現する。
後ろからゆっくりした足取りでじいちゃんが歩いてくる。
「急に海が走り出ていったから、そろそろ来るかと思ってな」
そう言って俺の頭を撫でる。
気づかれたくなくて、慌てて涙を拭う。
ぽんぽんと頭を撫でてじいちゃんが笑う。
「お前は独りぼっちじゃないさ。本当の独りってのはもっとずっと辛いもんだ」
涙のワケを見透かされたようで、俺は慌てて答えた。
「そんなの思ってないよ。ちょっと走ってきて息が切れただけだ」
年寄りはたまに戯言が言いたくなるもんさと笑いながらじいちゃんは家に入っていった。
早く行こうと海が俺にすり寄ってくる。
灯りのついた家。
さっきまでのモヤモヤした怒りを心の底に沈めて、俺はじいちゃんの背中を追い掛けた。
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