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戦前のマフィア史上もっとも悪名高い暗殺組織マーダー・インク…
この中において数々の大物マフィアを暗殺をした伝説のヒットマンがいた。
男の名はサミュエル・レイン。
ヘルズ・キッチンの孤児院で育ち、子供の頃から窃盗と乱闘を繰り返して塀の中と外を行ったり来たりしていたふだつきの悪ガキで、16歳で最初の殺人を犯していた。その時の報酬はたったの50ドル、相手は共にギャングになった無二の親友をリンチし殺害した男だった。
彼は殺し屋であると同時に厳格なユダヤ正教徒で、正当な理由の無い殺しはその生涯で1度しかせず、さらに暗殺によって稼いだ金は貧しい人や子供達に分け与えたりもしていた。
これは一般的に非情とされてきた“殺し屋”と呼ばれる者には考えられない事である。
人は彼を、トレードマークの赤い髪と流れる血にちなんで「レッド・レイン」と呼んだ。
彼は「自分の人生を破滅させた者に復讐するため」…その為だけに人として平穏に生きる道をドブに捨て、常に死と隣り合わせのギャングの世界に踏み込んだのである。
まさに復讐に人生の全てをかけた男だった。
彼はギャングの中でも義理に堅く、血の気の多い連中の中でもすば抜けて冷静で、何より周囲の尊敬を集めていた。
そんな彼が一級の殺し屋集団であるマーダー・インクにスカウトされるのは当然の事だと、誰もが思っていた。
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