罪人と姫君の出逢い

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幾重にも張り巡らした魔法封じの結界を尻目にレイは奥に進んで行く。 これだけの結界を張れば国内最強を謳われるセレンでもただの人だ。 魔法が存在することを許さない領域、獄層。 ここには凶悪犯罪者や手に負えない魔獣が閉じ込められている。 「あ、師匠!!」 レイは獄層のとある牢の前にいる女性に駆け寄った。 その女性とは間違いなく魔導師セレンだ。 セレンは牢の鍵を閉めた。 「? ああ、レイ様。 どうかなさいましたか?」 セレンはレイに膝をつく。 「ああっ! そんなことしなくても」 レイはセレンを立たせる。 セレンは抗うことなく立った。 「いえ、礼儀ですから。 それにしても何故姫がこんなところに?」 「え?………。 ………ええ。 今日拘束した罪人に面会を」 「………その罪人ならここに」 セレンは少し後退した。 そこにいたのは全身をローブに包んだ少年。 顔は見えない。 「………ローブのフードは取らないのですか?」 「………取ろうと思ったのですが………、 それを実行しようとした兵士の全てがこの罪人から発される殺気にあてられて……」 つまり、何があっても顔は明かさないということか………? 罪人の両手首には鋼の手錠がかけられていた。 足はとても重そうな鉄球に繋がれている。 そして牢の鉄柵には魔法封じの刻印が刻まれていた。 今はたとえレイでも負ける気はしない。 「罪人、目を覚ましなさい」 レイは静かに罪人に呼び掛けた。 「………」 罪人はローブの奥からレイを見上げた。 これが、二人が 初めて出逢った瞬間だった………。
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