190人が本棚に入れています
本棚に追加
この―安っぽい、黄色のビニール製の旗…。
落とすとすぐに割れてしまう、プラスチッキーな持ち手の棒…。
コストダウンの産物としか思えない、この黄色い『横断旗』を持って渡るのが、何よりの喜びだった、幼かった頃の自分が蘇る…。
あぁ…あの頃の私は、
可愛いかったなぁ。
あの純粋だった自分は、一体、何処に、消えてしまったのだろうか―。
胸に迫るノスタルジーを噛み締めながら…。
私は、三男に黄色い横断旗を手渡して言った。
「持ってみる?」
「うん!」
4歳になった我が子に、幼かったあの日の自分を重ねる……。
嗚呼、
これぞ昭和エレジー!!
胸にしみるねぇ…。
何やら、ジィ~ンとしていると――突然!
キキィーッッ!
…という複数のブレーキ音が鳴り響いた。
ハッとして顔を上げた私の目に映ったのは、
二車線の車道の、
上下両線に渡って、
ズラァ~っと急停車した
自動車の列であった。
その数、なんと十数台!
最初のコメントを投稿しよう!