幸せの黄色い旗。

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この―安っぽい、黄色のビニール製の旗…。 落とすとすぐに割れてしまう、プラスチッキーな持ち手の棒…。 コストダウンの産物としか思えない、この黄色い『横断旗』を持って渡るのが、何よりの喜びだった、幼かった頃の自分が蘇る…。 あぁ…あの頃の私は、 可愛いかったなぁ。 あの純粋だった自分は、一体、何処に、消えてしまったのだろうか―。 胸に迫るノスタルジーを噛み締めながら…。 私は、三男に黄色い横断旗を手渡して言った。 「持ってみる?」 「うん!」 4歳になった我が子に、幼かったあの日の自分を重ねる……。 嗚呼、 これぞ昭和エレジー!! 胸にしみるねぇ…。 何やら、ジィ~ンとしていると――突然! キキィーッッ! …という複数のブレーキ音が鳴り響いた。 ハッとして顔を上げた私の目に映ったのは、 二車線の車道の、 上下両線に渡って、 ズラァ~っと急停車した 自動車の列であった。 その数、なんと十数台!
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