幸せの黄色い旗。

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黄色い旗を手に持って、楽しそうに奇声を挙げている三男の手を引き、 私は渡った。 赤っ恥親子の、 記念すべき、第一歩である。 ちょうど、 横断歩道の真ん中に、 差し掛かった時―。 ハシャギ過ぎた三男が、 突然、旗を落とした。 おいおいおい! 頼むよ、息子~ォ!! 恥ずかしいから、 サッサと渡ってしまいたかったのに~っ! テンパった私は、 オロオロしながら、 黄色い旗を拾い上げて、自分の手に持った。 そして。 【モーゼの十戒】の様に左右にズラリと並んだ車の間を、 『すんません、  すんません―』 …と、つぶやきながら、 頭を下げ下げ、渡り切った。 『いたたまれない』とは この事だ。
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