赤い鈴――老婆

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彼が、歩きだし、少し遠くまで行った時、彼女は、手を振るのを急にピタッと止めた。 一瞬だが、彼女は、はっきりと見た。 堂々と歩いていく彼の背中に、白い老婆がいたのを。 その老婆は、少しだけこちらを向いて、目を細め、舌を出し、 笑っていた。 不気味なほどに…… 一瞬だったのだが、彼女の頭からは、その老婆の顔が消えない。 不吉な予感がした。 (大丈夫よ。彼は、絶対帰ってくるんだから。) そう自分に言い聞かせながら、家へ入った。
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