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君がいれば、
僕はそれで幸せだった。
「花束を、作って欲しいんですが。」
「どのような花束ですか?」
「…プレゼント用で。」
見えるかい?
この花束が。
『大変…!奥様が交通事故に遭ったって今電話が…!』
「初めての結婚記念日だって浮かれてたのはお前なのになぁ。」
そう呟きながら僕は線香に火を付ける。
「もうその結婚記念日から1年だよ。」
君がいなくなって気付いたんだ。君がいない世界はとにかく霞んでるってことに。
「人のこと置き去りにした罪は重いからな。」
本当なら、今日は君とお祝いするはずなのに。
結局去年と同じくそれは無理な話しになった。
「綺麗だろ?花束。好きだったカスミ草を沢山入れてもらったんだ。」
大きな花束に、僕はライターで火をつける。
「君が天国にいるなら、煙りになって届くかな?」
もし、
もし届くなら、
僕も煙りになってしまいたいよ。
「君を忘れるなんて、無理だと思うんだ。」
ゆっくりと、涙が瞳に溜まっていく。
「君はこれからも僕の大事な人だ。なぁ、そうだろう?」
例え君がいなくても、僕らが交わした契りは永久にあり続ける。
僕は死ぬで指にはまった結婚指輪を外さないだろう。
涙が流れ出し、頬を伝う。
目を閉じれば、君がいる。
優しく微笑む君が。
いつの間にか、花束は灰に変わり、バラバラになりながら飛んでいった。
「いつかそっちに行くから、それまで待っててくれ。」
来年もまたここに来るよ。
大きな花束を抱えて。
君に会いに…‥。
END
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