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「まだ残ってたんだ?」
そう言い放った人物の名は「高見沢 幸恵」通称「ユッキー」守の担任だ。
27歳と若めの教師だが、もっと若いのはその顔である。どう考えても高校生? というようなあどけなく、どこか守ってあげたくなるような、いわゆるロリ…童顔の持ち主である。しかし、そんな顔立ちとは裏腹に気が強く、からかう男子生徒を二言程度で一掃するほどの凶刃な意思の持ち主である。
「何してんの?」
教室戸に左肩を預け、何やら書類を手に提げて腕を組みながらもたれるような体勢で守に質問を浴びせている。
「え?いやべつに」
とすぐさま鞄を持ち出し、ユッキーとは逆の教室戸へと逃げるように歩き始める守。
しかしこれを見逃すはずもなく、歩行停止を要求。と同時に守も拒否権を申請。
「えなんで?やださよならバイバイ」
と足を止めず顔だけユッキーに向け出口に到達。それを追おうとはしないユッキーは次の一言で守の足を停止させた。
「進路は?」
止まったまま振り向こうともしない守がこれまた一言で言って伏せる。
「まだ」
はぁ~と呆れた感じに肩を竦め、
「柄沢ねぇ、もうホントあんただけだからね進路決まってないの」
「…」
と無言の守。
「進路室には行ったの?」
「いや」
開き直りの口調で即座に返事を返す守。
「本当にあんたは何がしたいの?」
「知るかよ」
「そんなんでずっと行くつもり?せめて進学か就職か決めなさいよ」
「てかそれ、てかそれ決めれたらあと苦労せんべや」
「じゃあ何もしないでいくつもり?」
「う~ん…そうだね、何もしないわ。何もしないことを今決めたよ」
「それってニートになるってことだよ?」
「いーべやニート。ニート万歳だべや。」
「それはあんたはいいかもしれないけど親に迷惑がかかるでしょ。」
「あーじゃあもういいかな、死ぬかな。」
「ふざけたこと言わないの!」
「じゃあどうすりゃいいんだよ!」
守は大きく、しかし控え目に声をあげた。場に一瞬の沈黙が広がる。
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