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「……ハァ……ハァ……わかったか、二度とらぶみに近づくんじゃねぇぞ」
返事はない。ボクサーの拳は刃物と同じ扱いを受ける。それが顎を貫いたのだ、しばらくは動く事すらままならないだろう。
刃物と同じ――つまり、俺は一郎を倒し、犯罪者となった。
そんな事はどうでもいい。これでらぶみは俺の女になる、それでいい。
「らぶみ、見てたのか」
「うん……」
「これでお前は俺のおん」
瞬間、路地裏から一人の男が『はい元気です!』のポーズそのままにコチラに駆け寄ってくる。
「ちょっと待ったー!!」
「じ、次郎くん……」
「次郎!? らぶみお前、3股かけてたのか!」
一郎を倒しようやく安息の日々を手に入れたと思っていた俺は、己の鈍さを恨んだ。
しかし俺の鈍さはそんなレベルではなかった。
「あと95人いるわ」
「な、なんだってー!」
考えている暇はなかった。俺の動揺を待っていたかのように次郎が脳天唐竹割りを繰り出してきたからだ。
反射的に体を横に振り、テンプルを狙っていたそれは俺の右肩に振り下ろされる。なんだってんだちくしょう!
「らぶみ! 俺はお前の恋人を全て倒してみせる! そしてお前も倒す!」
「倒すのかよ!」
らぶみのツッコミを支えに俺は右ストレートを全力で繰り出した。
夜はまだ明けそうにない。
……こうなります。つまりらぶみさんは98人恋人を作った時点でハッピーエンドが確定しているわけです。
アドバイスとしては、あと10人恋人を作り、よりザ・ワンに近付ける環境作りを心がける事です。がんばって下さいね。
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