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気が付くと薄暗い場所にいる。ここはおそらく洞窟の中だろう。前方は夜のように暗く、後方からは日光が照りつけているのがわかる。足にはロープが巻いており、手は両方とも後ろで固く結んである。幸いにも何かを掴むことぐらいはできる。
それにしても随分長い間、気絶していたようだ。すると後ろのほうから声がした。
「やっとお目覚めか。」
声の方向を向くと、さっきの盗賊が立っていた。どうやら俺は捕われの身らしい。
「我らの話を盗み聞きするという愚かな行動をとるから、捕えられてしまうのだよ。お前はあの方に許してもらうための道具なのだ。そこで大人しくしているがいい。」
高笑いしながら去っていく。
「待てよ!あの方って誰なんだよ!」
男は質問に答える様子は無く、すたすたと洞窟を出ていった。
「クソッ、こんなことになるならベルリアと行動すればよかったんだ。」
レイは数時間前に盗賊を駆逐した時のことを思い出していた。
ベルリアは俺が正式に王国騎士団に入れるように、戦闘の初歩を教えてくれたのかもしれない。俺は記憶が無いって言っちまったからな。
そう思いながらもここから脱出する方法を考えた。
周りを見渡すが、石ころと、中身の無い酒しかない。
この二つだけでどうすればいいのか悩んだが、名案が浮かんだ。
まず石を手に取り、ビンに向かって投げる。だが後ろ向きなことと、手が自由に使えないため中々当たらない。
今度は机を思い切り蹴った。
その衝撃でビンは床に落ち、見事に割れた。
ビンの破片の一つを手にとり、飲む用の水を破片に浸し、それを石にあてて研ぎ始めた。後向きなので見えないが、手が覚えているような感じで不思議と失敗はなかった。
研ぎ終わった破片を足のロープの上にのせ、力をこめる。するとロープはいとも簡単に切れた。
レイは急いで洞窟を抜け出した。
ベルリアともう一度会うために・・・・
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