聖なる町プリンシパリティ

2/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
 「これが町っていうのか。」  先に口を開いたのはレイだった  「俺は記憶を失ってからずっと人の居ない所で生活していたから、人が居る所は苦手なんだ。」  レイが不安げに言うと  「大丈夫。町の人達はみんなとても優しいし、知らない人が来ても親切に接してくれるから、この町に来た人達はみんな【いい町だね】といって、この町にわざわざ引っ越してくる人もいた程なの。だから心配しなくてもいいの。」  レイは少し戸惑っていたが、やがて笑顔がもどった。  ベルリアは嬉しそうにレイを見つめると、大きな城を指差した。  「あの城に私の父がいるの。レイをお父さんに紹介したいから、城まで来て。」  レイは言われるままに城の中に入った。  中はとても綺麗だった。  天井はとても高く、豪華なシャンデリアが幾つも並んでいる。  中の様子に見とれていると、いかにも王様だとわかる人が豪華な玉座に腰掛けていた。  その顔つきは堂々としていて威厳を感じさせ、少しも不安や動揺を感じさせなかった。  耐え切れず視線を外そうとしたそのとき  「お父さん、この人は盗賊に囲まれていた私を助けてくれたの。」  そう言うとベルリアの父は  「そうなのか。数人の盗賊達を一人で倒すとは、腕が立つようじゃの。名はなんと申す?」と聞かれた。  レイは慌てて  「レ、レイです。レイ・ヴァシクーヤといいます。」  「そうか、ではレイ、腕が立つのなら王国騎士団に入ってみたらどうじゃ?団長にはわしから言っておく。場所は城を出てすぐ右に曲がると見えてくる。ベルリア、一緒に行ってやりなさい。わしは用があるのでこれで失礼する」  そう言い残し大広間を去っていった。  「あんな威厳のある人を親にもつなんてすげえな!」  レイが興奮気味に言うと  「ふふふ、びっくりした?でもああ見えてすごく優しいところがあるの。」  ベルリアは少し自慢するように言った。  あのような父親をもてばどんなに誇らしいだろう。とレイは考える  だが今はそんなこと考えている場合ではない。王国騎士団に入るための手続きをしなければならないのだ。  「早く手続きをしにいこうぜ!!」  そう言うなり、レイは城を後にする。  「あいつ、何処か分かってるのかしら?」  と呟きながら、ベルリアもレイを追い掛ける。  とても楽しそうに・・・・
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!