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「これが町っていうのか。」
先に口を開いたのはレイだった
「俺は記憶を失ってからずっと人の居ない所で生活していたから、人が居る所は苦手なんだ。」
レイが不安げに言うと
「大丈夫。町の人達はみんなとても優しいし、知らない人が来ても親切に接してくれるから、この町に来た人達はみんな【いい町だね】といって、この町にわざわざ引っ越してくる人もいた程なの。だから心配しなくてもいいの。」
レイは少し戸惑っていたが、やがて笑顔がもどった。
ベルリアは嬉しそうにレイを見つめると、大きな城を指差した。
「あの城に私の父がいるの。レイをお父さんに紹介したいから、城まで来て。」
レイは言われるままに城の中に入った。
中はとても綺麗だった。
天井はとても高く、豪華なシャンデリアが幾つも並んでいる。
中の様子に見とれていると、いかにも王様だとわかる人が豪華な玉座に腰掛けていた。
その顔つきは堂々としていて威厳を感じさせ、少しも不安や動揺を感じさせなかった。
耐え切れず視線を外そうとしたそのとき
「お父さん、この人は盗賊に囲まれていた私を助けてくれたの。」
そう言うとベルリアの父は
「そうなのか。数人の盗賊達を一人で倒すとは、腕が立つようじゃの。名はなんと申す?」と聞かれた。
レイは慌てて
「レ、レイです。レイ・ヴァシクーヤといいます。」
「そうか、ではレイ、腕が立つのなら王国騎士団に入ってみたらどうじゃ?団長にはわしから言っておく。場所は城を出てすぐ右に曲がると見えてくる。ベルリア、一緒に行ってやりなさい。わしは用があるのでこれで失礼する」
そう言い残し大広間を去っていった。
「あんな威厳のある人を親にもつなんてすげえな!」
レイが興奮気味に言うと
「ふふふ、びっくりした?でもああ見えてすごく優しいところがあるの。」
ベルリアは少し自慢するように言った。
あのような父親をもてばどんなに誇らしいだろう。とレイは考える
だが今はそんなこと考えている場合ではない。王国騎士団に入るための手続きをしなければならないのだ。
「早く手続きをしにいこうぜ!!」
そう言うなり、レイは城を後にする。
「あいつ、何処か分かってるのかしら?」
と呟きながら、ベルリアもレイを追い掛ける。
とても楽しそうに・・・・
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