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「お前ってなんか病気なのか?」
アノが問う。
「うん、ちょっといろいろあって。まあ、似たようなもんかな」
「キリエもここに用事があったの。どちらにしろ、入ってみましょ。ここに突っ立っていたって、どうしようもないのだし。ねえ、ティルは毎日どこから家の中に入っているの?」
ティルにそう聞くと、脇道に少し入ったところに案内してくれた。そこから裏に回ると、花の咲き乱れる庭が見えた。小さいながらも綺麗な庭に、家の人の性格がかいま見えるようである。
庭の中に扉があって、それが家族のための入口のようだった。ティルは我が家の方へとかけていく。
ティルの小さな手が扉を叩く。すると、すぐに扉が開いた。
「坊ちゃま! 心配したのですよ、こんな時に! リアンは生きた心地がいたしませんでした」
中から出てきたのは、キリエたちより少し年上の少女だった。
十八、十九くらいだろう。彼女はその言葉の通り、やっと不安から解放されたような表情をしていた。無理もない。主人がいなくなってしまった上に、その息子まで居場所が分からなくなってしまったのだから。
「リアン、本当にごめんなさい。でも、お父様を探したかったんだ」
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