第一章 ゼルセガイアの精霊 前編

12/40
前へ
/55ページ
次へ
「お前ってなんか病気なのか?」    アノが問う。   「うん、ちょっといろいろあって。まあ、似たようなもんかな」   「キリエもここに用事があったの。どちらにしろ、入ってみましょ。ここに突っ立っていたって、どうしようもないのだし。ねえ、ティルは毎日どこから家の中に入っているの?」    ティルにそう聞くと、脇道に少し入ったところに案内してくれた。そこから裏に回ると、花の咲き乱れる庭が見えた。小さいながらも綺麗な庭に、家の人の性格がかいま見えるようである。    庭の中に扉があって、それが家族のための入口のようだった。ティルは我が家の方へとかけていく。  ティルの小さな手が扉を叩く。すると、すぐに扉が開いた。   「坊ちゃま! 心配したのですよ、こんな時に! リアンは生きた心地がいたしませんでした」    中から出てきたのは、キリエたちより少し年上の少女だった。    十八、十九くらいだろう。彼女はその言葉の通り、やっと不安から解放されたような表情をしていた。無理もない。主人がいなくなってしまった上に、その息子まで居場所が分からなくなってしまったのだから。   「リアン、本当にごめんなさい。でも、お父様を探したかったんだ」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加