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「リアン。玄関先で声を荒げるなんて、どうしたの?」
奥からかぼそげな声が聞こえて来る。
「お母様!」
「奥方様……」
その声に二人が同時に反応した。ティルはすぐにその人物のところへ走って行く。その表情には、今まで見せていた不安などなく、ただ満面の笑みがあった。
「お母様、起きていても大丈夫なの?」
「少しなら、大丈夫よ。ティル、こんなに遅くまで外にいちゃダメよ」
ティルの、はいと返事する声が聞こえる。穏やかそうな人であった。
「奥方様、本当にすみません。だって、この方たちが、ご主人様のいない間を狙って……」
扉まで来たティルの母は、キリエたちに向かって微笑んだ。茶色の髪が一筋肩にかかっている。肩掛けをまとったその肩は細く、真っ白な肌はいかにも病弱そうだが、しっかりとしたあしどりは芯の強さを感じさせた。
「まあ、お話はちゃんと聞いたのですか?」
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