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「え、でも、こんな人たちの話なんて」
アノは未だにリアンの対応に納得行かないようだった。腕を組んで、決してリアンたちの方を見ようとはしない。
その眼差しは氷のようで、キリエは出来るだけそちらを向かないように気をつけていた。万が一にもその怒りがこちらの方に来ることだけは、避けねばなるまい。
「悪い人たちには見えませんよ。こんなところもなんですから、中にお通しして」
ティルの母はキリエたちの方を再度見る。その目は優しい。
「この度は、ご迷惑をおかけいたしました。もしよろしければ、中でお話を聞かせてもらえませんか?」
ティルの母の微笑みは、百合が花開いたかのような可憐さであった。それに対して、アノの視線が和らぐ。そのことに一番ほっとしたのはもちろんキリエである。
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