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高さも奥行きも違う、雑多に並んだ建物群が後ろへと流れて行く。土埃で汚れた黄土色のコートを着た少年は、ただひたすらに走っている。滝のように流れる汗。少年にはそれを拭う余裕などない。
裏道が四方に広がっている故、彼は逃げ切れると思っていた。しかし、どうやらそれは甘かったらしい。後ろの二人組はどこまでも追って来ていた。
少年の名はキリエという。この街に着いた途端、右も左も分からないというのに、何故かもう追いかけられていた。身に覚えがないわけではなかったけれど、同年代の二人組に追いかけられる謂われはない。
より暗くより狭い道へと進む。周囲の風景はどんどん汚くなっていった。それでも、振りほどけないのだ。
後ろに気を取られていたキリエが、次の一歩を踏み出す。そして、それは起きた。少年の足首に何かがひっかかり、その瞬間上から特大の網が降って来たのである。
「うわああ!」
なすすべもなく、足を絡み取られた少年は転んだ。
「よし、追い込んだ! 何年この街に住んでると思うの。逃がさないよ!」
追いかけていた二人組の、少女の方が口を開く。
「ちょっと待って……、追いかけられるようなことをした覚えは……」
誤解を解くために、少年は一生懸命言い募る。一方、少女は興奮し、全く聞いている様子はないのである。
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