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ゼルセガイアは、二つの川の交差点にある貿易都市である。物品の流通地点として、商人たちが集い、発展した街だ。人と物の集まるこの街は、お金も舞い込んで来る。小さな町は外側へ外側へと拡大し、今では帝国でも随一の都市となっていた。
しかし、成り行きに任せた拡大は、雑然とした街並みを広がらせていた。袋小路も裏道も多く、初めて訪れた人は迷いやすいことでも有名である。
そんな街を見渡せる高台に、アノとイリーナの家はあった。行き当たりばったりな建築によって出来た、曲がりくねった階段を登る。しばらくして登場する、緑色の蔦で覆い隠されようとしている小さな家である。
出窓の下には幾つかの植木鉢が置いてあり、色とりどりな花が存在を主張していた。
「ごめん! 本当にごめん!」
少女は両手を目の前で合わせて、必死に謝っていた。
キリエたちがここまで来たのは、バケツの水で、少年がびしょ濡れになったからである。凡庸な顔立ちは、情けなく歪んでいた。
必死に謝るイリーナとは対照的に、アノはどこか飄々としていて、関係ないというように窓の外を眺めている。その二人の様子を、キリエは頭にタオルを乗せながら見ていた。
「アノもそんなところにいないで、謝りなさい!」
イリーナは、アノを窓際から引っ張りながら言う。くるくるとよく動く少女である。ふわふわとした金髪も、イリーナと一緒に揺らめいた。
「イリーナが勝手に勘違いしたんだろ」
「そ、そうだけれども……」
少女がいいよどむ。向かい合った二人は、特に似ていた。
「えっと、それより、どういうことか教えて貰えたら、嬉しいんだけど……」
控えめな言葉に、二対の若葉色の瞳がこちらを向く。
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