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「ねえ、ティルのお父様のお仕事は何?」
イリーナは真剣そのものだった。キリエは心の中で首を傾げる。
「お父様? お父様は、お医者さんなんだよ! すごいお医者さんなの。患者さんもたくさん来るし、貴族、とかにも呼ばれたりするんだよ!」
ティルは目を輝かせる。ティルは父が大好きなようだった。そうでもなければ、幼い少年がこんな街のはずれまで来ようとなんて思わないだろう。
それに、ティルによると父とは大層な有名人であるらしい。確かにそうでもなければ、たかが街医者を貴族が招くはずなどない。それほど腕がいいということなのだ。
イリーナとアノが目配せをする。キリエが分からない何かを、二人は読み取ったらしい。アノが口を開いた。
「あー、めんどくせえことになりそうだなあ。そういうことかよ……」
アノは、頭をがしがしとかく。
「そうと決まったわけではないけれど、可能性は大有りね。とりあえず、この子の家までに、行ってみましょうか」
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