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誰かが肩をたたいた。
慌てて周りを見渡すが、誰とも視線が絡まない。
今さっき私の肩を叩きましたよ、とゆう様子の人が誰一人いない。
…なんだったんだろう?
と思いながらも
飽きっぽい性格というか、
とにかく私は、もう探すのを諦めて、もう一度葵の方をむきなおった。
すると…
ポンポン
まさか?
と思って後ろを振り返る。
そこにはさっきまで私と早朝読書を楽しんでいた彼の顔があって、
彼の顔を飾る黒縁の眼鏡から、例の切れ長の瞳がこちらをのぞいている。
これはまさに『私が声をかけましたよ』、
と言う顔だ…
「えっと…?」
名前を呼ぼうとしたけど、そういえば私この人の名前をまだ知らない。
用があったから肩を叩かれたはずなのに、この沈黙は一体なんなのか。
どうしたらいいのか分からずおろおろしていると、
「榎本あずさ」
彼がしゃべった。
やっと、
初めて聞いた声。
でも
それ、私の名前。
「え、あ、はい。榎本です」
あと、
何でフルネーム?
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