*1.兎?いえ、宇崎です

30/60
32822人が本棚に入れています
本棚に追加
/682ページ
杞憂は舌打ちして眉を寄せた。 「……だから嫌だったんだ。この学園に来るの」 「嫌なら何故、来たんです?」 突然、背後から上がった声に杞憂は心臓がとび跳ねた。 「っ?!」 ほとんど反射で振り返ると、そこには不思議そうに小首を傾げた灰宮が立っている。 杞憂は、ますます渋い顔をした。 「いつからここにいた」 「いつからって……たった今、通りかかっただけなのだけど」 そう言った灰宮には、嘘をついている様子は無かった。 杞憂は深く、息を吐いて灰宮に問いかける。 「何をしているんだ、こんな所で。儀式は終わったんだろう」 「そ、それは……」 灰宮が言葉を詰まらせ、視線をさ迷わせる。 それに違和感を覚えた杞憂は更に追求しようとして、やめた。 興味無い。 杞憂は面倒そうに全く違う話題を口にした。 「で、カードは何色だ?」 「え? カード?」 追求されることを予想していた灰宮は少々面食らった顔でカードを差し出した。 その色は、白。 それに杞憂はさも面白くなさそうに言う。 「俺も、白だ」
/682ページ

最初のコメントを投稿しよう!