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杞憂は舌打ちして眉を寄せた。
「……だから嫌だったんだ。この学園に来るの」
「嫌なら何故、来たんです?」
突然、背後から上がった声に杞憂は心臓がとび跳ねた。
「っ?!」
ほとんど反射で振り返ると、そこには不思議そうに小首を傾げた灰宮が立っている。
杞憂は、ますます渋い顔をした。
「いつからここにいた」
「いつからって……たった今、通りかかっただけなのだけど」
そう言った灰宮には、嘘をついている様子は無かった。
杞憂は深く、息を吐いて灰宮に問いかける。
「何をしているんだ、こんな所で。儀式は終わったんだろう」
「そ、それは……」
灰宮が言葉を詰まらせ、視線をさ迷わせる。
それに違和感を覚えた杞憂は更に追求しようとして、やめた。
興味無い。
杞憂は面倒そうに全く違う話題を口にした。
「で、カードは何色だ?」
「え? カード?」
追求されることを予想していた灰宮は少々面食らった顔でカードを差し出した。
その色は、白。
それに杞憂はさも面白くなさそうに言う。
「俺も、白だ」
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