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何だか嬉しいような、悲しいような、切ないような、それでいて──ひどく懐かしい。
そんな既視感に、引かれるように涼都は自然と振り向いていた。
けれど。
(誰もいない)
そこにはただ、自分が歩いてきたアスファルトの地面が広がるばかりだ。
「……疲れてんのかな、俺」
確かに、誰かとすれ違ったような気がしたんだが。
ま、いいや。
誰もいない背後を振り返るなんて恥ずかしい事はスッパリ忘れる事にしようか、うん。
久しぶりに昔の夢なんて見たから、調子でも狂っているんだろう。
そう涼都は気を取り直して再び歩き出した。
しかしそれも2、3歩。
突然、ふっと薄い膜をくぐり抜けたような不思議な感覚がする。
ソレと同時に春にしては閑散としていた道がいっきに喧騒に包まれた。
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