32827人が本棚に入れています
本棚に追加
/682ページ
*─────────────────*
荻村は驚きのあまり、言葉が出なかった。
それは荻村だけじゃなく、他の儀式担当の教師陣も一様に唖然としている。
前から聞かされていた荻村でさえ驚いたのだから、話も聞いていない他の教師がこうなるのは当然だろう。
担任の荻村には資料が送られていたが、これは
(予想外、なんてもんじゃねぇぞ)
荻村はピンッと指で資料を弾いた。
目の前には、その紙に貼り付けられた写真と同じ人物が同じように笑っている。
「儀式はもう終わりましたよね? もう俺、帰ってもいいですか?」
設楽東。
設楽家といえば四大一門、その上『設楽』を名乗ることを許された本家の人間。
優秀だと、聞いていた。
本当は学校など通わなくともよくて、そこらへんの魔術師なんぞは目じゃない腕前だと。
本人たっての希望で、行く必要もない桜華に来ることになったらしく、魔術師見習いではなく魔術師の色にカードは変わるだろう、と散々言われてきた。
だからある程度は想定していた、それなのに。
(嘘だろ)
荻村はまだ信じられない気持ちで、カードを凝視する。
それは、太陽の光を受けて黄金に輝いていた。
最初のコメントを投稿しよう!