*1.兎?いえ、宇崎です

25/60
32827人が本棚に入れています
本棚に追加
/682ページ
*─────────────────* 「ほー……ここが学園長室か」 涼都は感心した声をあげて、目の前の扉を見た。 それは木製で、少し重そうな洋風の扉だ。 「ま、学園長室に何で呼ばれたのかは訊かねぇが、おっかねぇオバさんには気をつけな」 そうは言うが宇崎、中にいる学園長に、その最後の単語は聞こえていないのだろうか。 涼都は視線を、扉から宇崎へ移した。 何だかんだと言いながら(ゆるゆるだけど)制服を着た彼は、堂々とノータイで学園長室まで涼都を連れて来てくれた。 (こいつ、結構良いヤツなのかもな) 内心で見直した涼都は、立ち去る宇崎の背に声をかけた。 「ありがとな、先輩」 ピタリと、宇崎の足が止まる。 そのまま行ってしまうものと思っていた涼都は、振り向いた宇崎に怪訝な表情を浮かべた。 (まだ、俺に何か用か?) 「りょーと、だっけ?」 「あ?」 いきなり下の名前が出てきて、更に涼都は怪訝な表情を深くした。 「『御厨涼都』だろ? お前の名前。確か入学式の受付で会ったよな、俺ら」 難しい漢字だから覚えてたぜ、とどこか得意げに笑った宇崎に、涼都はやっと納得した。
/682ページ

最初のコメントを投稿しよう!