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「ほー……ここが学園長室か」
涼都は感心した声をあげて、目の前の扉を見た。
それは木製で、少し重そうな洋風の扉だ。
「ま、学園長室に何で呼ばれたのかは訊かねぇが、おっかねぇオバさんには気をつけな」
そうは言うが宇崎、中にいる学園長に、その最後の単語は聞こえていないのだろうか。
涼都は視線を、扉から宇崎へ移した。
何だかんだと言いながら(ゆるゆるだけど)制服を着た彼は、堂々とノータイで学園長室まで涼都を連れて来てくれた。
(こいつ、結構良いヤツなのかもな)
内心で見直した涼都は、立ち去る宇崎の背に声をかけた。
「ありがとな、先輩」
ピタリと、宇崎の足が止まる。
そのまま行ってしまうものと思っていた涼都は、振り向いた宇崎に怪訝な表情を浮かべた。
(まだ、俺に何か用か?)
「りょーと、だっけ?」
「あ?」
いきなり下の名前が出てきて、更に涼都は怪訝な表情を深くした。
「『御厨涼都』だろ? お前の名前。確か入学式の受付で会ったよな、俺ら」
難しい漢字だから覚えてたぜ、とどこか得意げに笑った宇崎に、涼都はやっと納得した。
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