*1.兎?いえ、宇崎です

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つまり、彼も覚えていたのだ。涼都が宇崎のことを覚えていたように。 お互い、印象が強い人種らしい。 「まぁ画数多いしな。たいてい、俺の名前聞いたヤツは漢字をどう書くのか質問してくるよ」 「まぁ、そーだろうな」 一応、受付の名簿で名前をチェックした宇崎は、漢字も覚えているようだ。 そんな宇崎は、何故かいきなり真顔になった。 「俺は宇崎 雪人(ゆひと)だ。いいか、雪の人で『ゆひと』だぞ。ゆきとじゃないからな」 そうやってわざわざ言うあたり、よほど間違えられるらしい。 しかし、それ以上に。 (名前、似合わねー) なんというか、シャツもマトモに着ないで走り回る宇崎から雪人なんて綺麗な響きの名前は、超絶似合ってない気がした。 だがさすがにそれを言うのは気の毒なので、苦笑に留めると、今度こそ宇崎は涼都に背を向ける。 「まぁ何はともあれ」 そして、顔だけ涼都に向けて言った。 「ようこそ、桜華学園へ」 その言葉と、言い方、その笑顔に物凄い含みのあるものを感じて涼都は目を細めた。 なんだ、今の。 (まだ何かあんのか、この学園) 半ばうんざりしながら、涼都は学園長室の扉をノックした。
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