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「バンドやらない?」
そいつが声を掛けてきたのは、中間試験が終わって次の日の大掃除の時間だった。
僅かに真面目なやつが慌ただしく掃除をしているのをボーっと眺めていたらいきなり言われた。
「え?」
そいつの名前は知ってた。変わったばかりのクラスの中で新たな友達を探していたときに目をつけた中の1人だ。
山中 海陸(ヤマナカ カイム)
なかなか顔立ちの整った…というか整いすぎた芸能人系の顔をしている。
「…どういう意味?山中くん」
「あ、覚えててくれたんだ。嬉しいかも」
そう言って山中は俺の隣へと座った。
「で?どういう意味?」
「ん?そのまんまの意味だよ。バンドを組みたいから、君も入らない?って意味」
山中が微笑む。
言い忘れていたがコイツは男だ。
「なんで…僕?」
なんとなく…本当になんとなくだが俺は学校では自分を「僕」と言うことにしていた。成績がよかった(下が沢山いた)から優等生ぶりたかったのかもしれない。
「他にも沢山めぼしい人はいるでしょ?例えば、彼ら。」
そう言って俺は同じように廊下の隅で集まって話している少しチャラチャラした男子の集団を目で指した。
確か、学校にギターらしきものを持ってきていたのを見たことがある。
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