~PROLOGUE~

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  「いやぁっ!! やめてぇぇぇっ!!」 楽しそうにナイフを振り回し、血を浴びていく男達―― グサッ……ザシュッ…… 「お父さん! お父さんっ!!」 男は、少女の目の前で、真っ赤な肉の塊へと化していく。 「牡丹っ!! こっちよ!!」 女が少女の手を引っ張り、二階へと走る。 子供部屋に入り、中から鍵を掛ける。 可愛らしいオルゴール、本棚には絵本、ピンクのベットの上にはお気に入りのテディベア。 大好きな自分の部屋なのに、今は早くここから出て外へ行きたいと思っている。 女は少女とベットの下に隠れた。 少女は恐怖から逃れるように、目を固く閉じた。 そのせいで、音がよく聞こえてしまう。 男達が階段を上がってくる音……ドアを殴る音……ドアを叩き壊した音……そして、部屋へ入ってくる足音。 女は、震える少女を優しく抱いた。しかし、その女の腕も震えていた。 「み~つけた……」 女と少女は簡単に見つかり、男達によってベットの下から引っ張り出される。 「アハハハハハっ!! ヒャ~ハハハハハ!!!」 男達は狂ったように笑いながら、後ろに少女を庇う女を楽しそうに刺していく。 女の血しぶきが少女を赤く染めた。 「お母さんっ!! お母さんっ!!!」 血だらけになって、少女の目の前で崩れ落ちる女。 一緒にオルゴールも床に落ち、静かに音楽を奏でた。 「お母さんっ!?」   女は血の付いた手で、少女の頬に触れた。 「ぼ、牡丹……生きて………必ず……生きな……さい……」 言い終わると同時に、女の手が床に落ちた。少女の頬に、赤い血の線が残る。 「お母さん……? お母さ……おかあさぁぁあぁぁあぁんっ!!!!」 オルゴールから流れている音楽が、レクイエムに聞こえた。  
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