宝物

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  生きてるって判らない。 決められた時間に起きて、 決められた制服を着て、 決められた学校に通う。 それが生きてるって意味なの? 中学に入学してすぐの頃、そんな疑問が頭から離れなくなった。 小学校の頃から仲が良かった子は、どんどん新しい友達を作っていく。 私は、馴染めなかった。 女子特有の仲良しグループの輪の中に入れなくて、一歩下がったところから眺めていた。 そんな頃、図書館で一冊の本を手に取った。 『リストカット・シンドローム』 女性の綺麗な左手に、注射器が握られている、シンプルな表紙。 最初は表紙に惹かれただけだったけど、何故か食い入るように本文を読んだ。 手首を切って、血が出る。 そうすると、生きてるって思える。 そんな文章は、私を釘付けにした。 リストカット=自殺 としか考えていなかったけど、私は図書館のトイレで、カッターを握り締めて手首に宛てた。 ぐっと力を込めて、横に引く。 チリっと痛みが走る。 赤い筋が出来て、薄く血が滲んだ。      
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