違う

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トイレで手首を切った日から、私は取り憑かれたように手首を切った。 もっと、宝物を増やしたいから。 ある日、話したことも無い人たちが私の席に来た。 「手首見せてよ。切ってるんでしょ?」 同じことを聞いてくる人は、違うクラスからも来た。 女子だけじゃなくて、男子も興味を示した。 「痛くないの?」 「うわっ、グロっ!」 「どうして切るの?」 「初めて見た…」 放っといて欲しかった。 それなのに、担任に呼び出される。 「もうそれ病気よ?」 違う。 「精神科に行ったほうがいいわ。薬をもらって飲むといいんじゃない?」 違う。 私はただ、生きている証拠が欲しかっただけなんだ。 自分だけの宝物が欲しかったんだ。 誰もいない教室で、独りで泣いた。      
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