『絶望』

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「もう一度空を見て。きっともう少しで会えるわ」 闇が晴れると、空に広がった景色は赤と青が混ざり合った淡い紫色。 何が僕を気付かせたのかは分からないが僕は僕をちゃんと知っている。 「僕はエドワルド。みんなは僕のことをエディって呼んでいた」 表に出た不安は微かなスミレの香りといっしょに流されていた。 自分を確信したことがこれほど安心できるなんて知らなかった。 「じゃあエディ、次は私を見つけ出して」 僕にとっても君を見つけることが何よりも意味のあること。 それは分かっているから僕は広大なこの大地をせわしく走り回った。花だけが美しく咲き誇るこの大地に何か違和感を感じたのがちょうどこの時だった。 「私はあなたとは違うけど、あなたが願い自身を信じていけるのならきっと私に会えるはずよ」 女性の言葉にはどれほどの意味がこもっているのか、この似つかない空と大地がいったいどういうことなのか、君はどこにいるのか、僕がなぜここにいるのか。 「この大地の中に君を感じるんだ。この大地に何か僕が知らない、でもすごく優しく力強い思いを感じるんだ。でも会えない。決して君には届かない気がする」 この事実が僕の足を止め、認識がまた僕を闇雲に足を動かし走らせた。 「その思いはいつも私のそばにあって、あなたがかつて一番求めた思い。怖がらないで、それはあなたのことを強く愛した人の今もなお流れるように止めどなく信じているもの。あなたと私をつなぐ大きな力」
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