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『………あ?』
恐る恐る赤子の顔を覗き込む。
すると、赤子はそこで初めて薄らと目を開いた。
今度こそ泣くのかと構えたが、赤子はそのまま目を閉じて、再び寝息をたて始めたではないか。
『………………なんだコイツ…』
想像していたのとは全然違う。
まぁ、泣かないに越したことはないので、こちらとしては助かるのだが。ちなみに、性別はどうやら男らしい。
取り敢えず凶太は、眠る赤子を無造作に抱えて、自分の宮へと戻っていった。
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天界に時の概念は無いのだが、地上で例えるならば3日程が経過した頃の事。
凶太は宮の中を這いずり回る、奇妙な生き物を見付けた。
『……………』
まだ生え揃ったばかり、というような深緑の髪に、空色の瞳と雪色の肌をした生き物。
ただし、凶太にはその生き物に、見覚えのある部分が数ヵ所あった。
額に埋まった呪いの宝珠。
首筋に浮かぶ、紺色の花のような痣。
赤子の扱いが全く分からず素っ裸で放置していた際、どこぞの女神が見兼ねて着せた産着。しかし随分と丈が短くなっているが。
そこでようやく、四つん這いで移動しているこの生き物が、他ならぬ我が子であるという事を把握した。
『…短命の呪いのせいってか?』
だからこうも成長が早いのかと、動き回る赤子の産着の襟首を引っ掴み、呆れ半分で全体を見回した。
赤子の方はというと、特に抗いもせず、しかし探検を邪魔された為かジトリとした目で父神を見詰めている。
『…目付き悪ィのは俺に似たみてぇだな』
もうちょっと可愛気くらい持て。
そう言って床に降ろしてやると、赤子はまた這い回り始めた。
凶太もその場にドカリと腰を下ろし、赤子の動く様を眺めていた。
障害物等にぶつかったりしないかと、知らず知らずの内にハラハラしていた事には、この時の凶太はまだ気付かないでいた。
また暫く時が過ぎた頃、赤子はまたしても急に成長を遂げていた。
否、赤子、というにはもう、不適切であろう。
四つん這いではなく二本の脚で立つその成りは、赤子というよりは童子といった様子だ。
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