フェイズ・2

3/7
前へ
/124ページ
次へ
 食事中のロリータは口をぽかんと開けたまま、ホロビューアが映し出す血まみれの怪我人やばらばらの死体が何人も運ばれる映像を見ている。ナンシーがWW‐HM‐0011に命令しホロ・コンテンツをザッピングしたが、ニュース・コンテンツはどこもこの話題だ。「何の為にコンテンツが沢山あるのよ」ナンシーがぼやく。「視聴率が取れるからだろ。報道機関も商売だからな」とオットー。オットーとバートがたった今話していたのもこのニュースについてだった。 「…現在まで確認されたデトロイト駅爆破事件の犠牲者は百人を超え、企業国家フレッシュ・リフォー、企業国家TSCドランメン、企業国家フジ・ニイタカの社員が主な犠牲者です!これは無差別殺人です!今回行われたこの暴力の古典はここf年(十六年)では最大規模で…」  ホロビューアでレポーターが叫んでいる。爆破現場を映すウィンドウと平行して国際同人イデオローグ『低所得者解放戦線』の指導者、三越赤(みつこし せき)の映像が映っているウィンドウが現われ、打倒超資本主義の声明を読み上げる。同人イデオローグとは、自分達で発明又は先祖から受け継がれる無認可イデオロギーのユーザーを指す言葉だ。近代では、イデオロギーは企業国家から買うのが一般的だ。  ナンシーはホロコンソールで通信販売コンテンツのうちの一つを選択し、ホロビューアに映っていた堅い口調で声明を読み上げる爆破犯のボスを健康食品を大げさに褒めるさわやかなレオタードの美女にすり代えた。しかし、ロリータもWW‐HM‐0011に命令し、ニュースの映像を別ウィンドウで表示する。 「早く学校に行かないと遅れるわよ!」ナンシーがため息混じりに急かすが、ロリータの目は立ち上がりながらもホロビューアに釘付けになっていた。 「全く、なんで私の親族はウォージャンキーばっかりなの?」 「だって、限定戦争してない所で爆発がおこったんだよ!大変だよ!」 「早く学校行かないとあんたの成績もあの世行きよ」 「了解」 「了解はやめなさい!」  鞄を掴んで走り出すロリータの後ろからナンシーの声が飛んだ。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加