フェイズ・2

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「なんで?」 「昨夜はお父さんとお母さんが留守で、エリーがいるのに私を見てるって言ってお母さんの弟のバートが来てたのよ」とロリータ。エリーとはWW‐HM‐0011の製品名『ホーム・マニューバー・ダブルオーイレブン』のイレブンの綴りの最初の部分、ELEからロリータが名付けた愛称だ。「それで彼、リビングで限定戦争中継を見てたわけ。私はせっかく私の面倒を見る為に泊まりにきたバートを独りにしたら悪いと思って二階からリビングに降りたんだけど、その途端にエリーが彼が観てた飛行機が戦う限定戦争のホロを切っちゃったのよ」  戦車や兵士が出る限定戦争の中継は殺人に伴う凄惨なシーンがあり、年齢制限がかかる。バートとしては気を利かせて比較的ショッキングな映像の少ない揚力超越戦闘機の戦闘中継を選んだのだが、エリーはジーザスエイジであるナンシーから、ロリータにはあらゆる限定戦争に関わるホロ・コンテンツを見せないように指示されていた。 「それで、私の女子フットボールとホロシェアリングするから飛行機が戦うホロくらい見てもいいだろうって言うバートと、ジーザスエイジのお母さんから私に限定戦争を見せちゃいけないって言われてるエリーの間でけんかになって、見るのが遅れたのよ」  ジーザスエイジとは聖者ジーザス・クライスト(イエス・キリスト、又はイエズス・ハリストス)の生誕を基準とする暦を使用していた西暦時代の、世界が武力衝突と反戦運動の歴史であった事とジーザス・クライストのスローガン「汝の敵を愛せよ」から出来た言葉で、今や組織間の交渉の目的以外に社会の景気の守護神とも言える重要なショービジネスである限定戦争をも否定する反戦主義を掲げる同人イデオローグを指す言葉として使われている。「私は部屋で観るって言ったんだけど、バートがリビングで一緒に観ようって言って、結局二人で女子フットボールを観たわけ」 「ふうん」と子子。「そう言えば、フットボールからダンスのインスピレーションが出ないかなと思ってたんだけど、昨日ネットでサックウォークの新しい奴を見つけたのよ。この前シャロン・Cがアイディア出したのと少し似てた」子子が話題をダンスに変える。
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