フェイズ・2

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「本当?ブガルーイングのダンスはシャロン・Cが得意だから、喜ぶかもね」 「好きだね、あんたら」 「楽しいよ、ダンスは。コレットもやらない?」 「私は人前で踊るのはちょっと…ほら、私、シャイだから」 「あんたがシャイだったら、地球圏みんなが引きこもりだよ」 「フットボール選手も?」 「きっとネットゲームで試合するんだよ」下らない会話をしながら何気なく顔を入り口に向けたロリータは、講義室にウォージャンキーの男子の一団を発見した。その中にクリストファーの姿を見つけ、ロリータは憂欝になった。  男子の集団は限定戦争ではなく、今朝の無差別殺人の話で盛り上がっている。 「あいつら…爆発が起これば何でもいいんだね」とコレット。 「よかったじゃん、あいつらの関心が別の物に向いて」 「そうかな…」 子子の言葉にロリータが疑問を投げ掛ける。 「え、何?LT、かまって欲しいの?あいつらに」 「違うって」ロリータが子子に抗議した。 昼休み、ギャラントがエミッタとプレイヤーを持って体育館へ行くと、ロリータ、子子、シャロンそしてドミニクの四人が既に体育館の隅でストレッチをしており、ギャラントはそれを見て昼食の後なのによくやるなと関心した。彼女達はエネルギーの塊だ。 体育館では他にバスケットボール等に興じる生徒も多数いるが、ギャラントは子供達に必要なのは芸術を見て楽しいと思ったり自分なりの表現を実践したりする事だと思っていた。 絵画、音楽、フィクション(映画や小説)等、人類が考えられる全ての芸術のアイディアが出尽くして飽和状態になり、新たな物を造っても必ず過去のどこかの時点に造られた物と重なってしまう近代、どこかで見た事のある絵や彫刻、どこかで聞いた事のある音楽ばかりが氾濫し、人類は新たな芸術を創作する事や発展させる事に対する興味を失った。  過去に生産された著作物は発展の道を踏み外し、激しい流通の奔流にもみくちゃにされて質を落としながら資本と権利の迷宮を右往左往するばかりだった。 電脳暦においてはもはや世界規模のバブル的なマネーゲームを継続する事自体が人類の活動の史上目的であり、子供にも資本のやりとりを教育する事が常識だったが、ギャラントは企業国家主導の人類全体の認識に疑問を感じ、音楽等で子供の芸術性を育てられないかと言う画期的なアイディアを思いついた。
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