フェイズ・1

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「ファイブ、シックス、セブン、エイト」 バスケットボールやバドミントン等をプレイする生徒で賑わう体育館の片隅で、リズム同調システムを備えたサウンド・レコーダーがカウントにあわせてヒップ・ホップの音楽を奏でる。 やや込み合ったそのリズムに合わせて四人の少女達が揃った挙動で跳ねるように踊る。腕をクロスさせ、脇に引き戻し、左足からリズミカルに後退する。上半身と腕が足のアクションに同調して跳ね、力強く右腕を前に振り上げ、右上を指し、そして下ろす。少女達の前のホログラム・エミッタ(立体映像投影機)が光学センサーで捉えた少女達の姿をホログラムとして本人達の目の前に向かい合わせに映し出している。立体映像の鏡だ。 「ポインティング(指差し)はもっと力強く、肩から引き上げて!」 リズムに合わせて肩をアップダウンさせながら躍動する少女達に黒人の女性教諭カレン・ギャラントが指示を出す。7年生の同級生である四人の少女は床を踏みならし、振り付けに忠実に挙動をさらに強調したアクションで踊る。 やがて音楽がクライマックスに近づくと、それに合わせてダンスの振り付けもクライマックスに達し、四人が正面を向いて腕組みをしたポーズでフィニッシュを迎えた。 「OK、OK」ギャラントが手を叩きながら喝采し、四人が肩を叩き合いながらお互いを讃える。「覚えが早いわ。若いっていいわねえ」 「若い分動きにもキレがあるしね!」ギャラントの言葉にブルネットでショートヘアの少女、淵田子子(ふちだ ねこ)が答えた。 「キレがあるのはあんたじゃないでしょ」ギャラントと同じく肌の黒い少女、シャロン・C・ラムズフェルドが子々にそう言い、ブロンドを頭の両側で結んだ少女の方を見た。 「私?」その視線の先にいる少女、ロリータ・ティンクル・ハットマンは碧い目に少し照れの色を浮かべる。 「LTは格闘技をやってただけの事はあって筋肉がしまってるから、動きにもキレがあるじゃない?ロッキングやポインティングのびしっと止める動きは、完成された肉体が必要なのよ。何で格闘技辞めたの?もったいない」とシャロン・C。 「カラテとキックボクシングを辞めたから、ダンスに参加してるんじゃない」ロリータがぶすっとして答える。
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