フェイズ・1

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「ジーザスエイジのお出ましだぜ」 ウォージャンキーの男子の一人、マーズ・ナポリタンがそう言うと、集団の全員がロリータを見た。ロリータは努めてそれを無視して自分の席につく。 「限定戦争は反対でも、学校を敵にまわしてるギャラントとは仲がいいんだな」集団の中の昼休みにバスケットボールをしていたファルコン・トラビス・マクラーレンがロリータをひやかす。  一ヵ月前、ロリータの母親が限定戦争を含めた殺し合いを盲目的に否定するジーザスエイジであると言う事がクラスに知れて以来、ロリータはウォージャンキー、つまり熱狂的限定戦争ファンの集団の冷やかしの標的になってしまった。 「反社会的なジーザスエイジを手懐けて学校のスパイにしようとしてるんじゃないか?」集団の一人、クリストファー・ディズレーリがロリータの方を見て言った。 「うるさいわね!」そう言って立ち上がったのはロリータではなく隣の席の子子だ。 「戦争に反対してるのはLTじゃないって何度言ったら解るのよ!そんなに限定戦争が好きならあんたらが限定戦争に行けばいいじゃない!ガキみたいに役にも立たないバーチャロイドのカード見せっこなんかしないでさ!」 「LTみたいにバーチャロン・ポジティブが高くないからな」  バーチャロン・ポジティブとはVCa0年に新発売されて限定戦争用兵器の市場に出回り始めた、全高平均15メートルの高性能人型機動兵器シリーズ『バーチャロイド』のパイロット適性だ。現在、複数のメーカーが様々なバーチャロイドを開発、販売し、世界中のレンタリアはバーチャロイドでごったがえしている。 「限定戦争の適性が高いのにわざわざ戦争に反対するなんて、嫌味だよなー」  クリストファーを始めとした男子が次々と茶化す。 「何聞いてんの?バカじゃないの?いつLTが限定戦争に反対したのよ!」 「もう、やめようよ…」ロリータが子々の袖を引っ張った。クラスの視線は子子とクリストファーを中心とした騒ぎの集団に向けられている。勿論、その集団にはロリータも含まれていた。 「LTが逃げ腰だから、ウォージャンキーどもが付け上がるのよ!それにこいつら、ギャラント先生の事まで…」 子子がそう言った時、講義室の入り口が開き、歴史と国際法律の担当教諭である担任のマイケル・バーンが入って来た。子子がすっと座り、ウォージャンキーがぱっと散る。
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