住み込みバイト

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ピロピロピロ… ピロピロピロ… 「はい。桜井です。」 「ああ~お疲れ様、今大丈夫?」 「あ、はい…」 電話の向こうは板垣所長だ。 「悪いね。休みのとこ。」 「…いえ全然。どうしました?」 「あのさ、桜井、突然なんだけど、白馬いかない?」 「はっ?」 …まただ、うちの所長はいつもこう突然言い出すのである。 「…はくばって??」 「長野県の白馬。」 白馬という地名は聞いたことはあるが、ほとんど知らない。 一度過去に行ったことがあるが、軽井沢の旅行の帰りに少しだけ寄っただけで、あまりよく覚えていない。 「白馬のホテルでさ、人を募集してるんだけど、どう?バイト…行かない?住み込みで1週間か2週間ぐらいで帰ってきていいから。」 「そうなんですか?えっ!行きます!」 (楽しそう!) 以前から住み込みバイトに興味はあったが機会がなくて行ったことがなかった。 住み込みと聞いただけで不覚にもワクワクしてしまった…。 聞くと、取引先から、取引先の所有するホテルで、人が足りないから誰かいないかと急な要請を受けたようだ。 通常はうちの派遣会社では貿易事務や医療事務など一般事務を取り扱っているので、ホテルの派遣はあまり行ってない。 その為、派遣会社の社員達もすぐに返事が帰って来ないらしい。 今事務所は忙しいが、1~2週間ならなんとかなるから、私も最近疲れてるようだから、白馬へいってリフレッシュしてきたらいい…という所長の考えだった。 すっかり乗り気になった私は、 「で、いつからです?」 「いつでもいいけど…出来れば、あさってから。」 「ええ~!行きます!」 軽い驚きを混ぜた返事を返した私の心はすでに白馬に飛んでいた。 「じゃあ、ホテルまでは連れていくから、あさっての朝6に出るから準備しておいてね。」 季節は1月。私の住んでいる所も雪は積もっているが、白馬はもっとすごい雪だろう。 想像すると心が踊りだした。 台所にいた母に伝えると母も喜んで行ってこい行ってこいと言い、こう言った。 「行って、白馬の王子様見つけてこい。」 「うん!見つけてくる~♪♪」 私はそんな気はさらさらなかったが、嬉しさの余り軽くそう応えた。
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