住み込みバイト

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新潟の糸井川を南に下っていくとまもなく、案内表示にも白馬の文字が見えだした。 道は細いが、周りはのどかな田舎の風景が広がり、平行に山が連なって狭さを感じさせない。 この辺りは地元とそうかわらず積雪30~50センチほどでまだ、たいしたことはない。 私の地元も冬は雪が降り、かなり積もる時もある。 雪は慣れっこだった。 ところが…白馬にほどなくちかづいて、白馬駅が見えた頃には雪はかなり積もっていて、真っ白な世界が浮かび上がっていた。 駅前の通りをずっと上がっていくと、左手に赤茶色のレンガを組み合わせたような模様の看板がある。『Hakuba』と書いてある。 そこを右手にまっすぐいくと、今度は『NAGANO』と書かれたオリンピックの記念のものらしきの旗などが立っている。 そこを左に入ると今度はぐっと急な坂が続いており、登っていくと急にまた雪深くなった。 1m50センチぐらいは軽く超えていて、低い看板は雪に埋もれ、道路にたつ確認ミラーも雪の重みで見事におれ曲がって役に立たなくなっている。 ホテルの名前の書いた看板をさっきから探しているがなかなか見つからない。 「たぶんこの辺りなんだけど…」 同じ道をぐるぐるしているような感じで、ある細い道を通った時、雪に埋もれた小さな文字が見えた。 ウ…ェ…ス…ミ…その後の文字は雪に埋もれている。 「所長ここじゃないですか?!」 私は車を止めてもらい、小さな看板に駆け寄り、素手で雪を払った。 【ウェスミンスターホテル白馬 →】 今日の目的地である。 誇らしげに私は車に戻った。 「おお…良かった…ありがと桜井。」 車は矢印の向かっている方向に走りだした。 走りだしたといっても、正確には、雪の多さで轍にはまりそうになりながらノロノロと進んで行ったのだが…
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