ループ

7/21
18209人が本棚に入れています
本棚に追加
/765ページ
    「原因は明らかにさっきの爆発だけど、復帰する様子が全然ない…… 基地局でもあったのかな?」 「知らん」 俺は再度辺りを見渡してから、最後に消し飛んだ『元』壁面を注視する。 本部ビルのときのような『壊死』でもなく、《イレイザー》のような『消滅』でもなく、《クラッシャー》のような破砕でもない。 工事用の重機でこそぎとったかのような跡だ。 「これが何だか分からないか?」 考えを巡らせながら穴の淵。 ついてきた豊田へ名指しで尋ねてみるも、唸り声をあげて液晶を叩くだけ。 駄目か。 「電波がないせいでどこのデータベースにもアクセス出来ないし、《ピカレスク》は演算処理用の『能力』だからHDDを積んでる訳じゃないからログもポートもクッキーもないしそれに」 「分かった」 分かったから黙れ。 話が専門分野にいつ飛躍するか分からない。 とりあえずデータを取るように言いかけて、データを取っても保存がきかないことを思い出して舌打ち。 こいつの能力にこんな穴があるとは。 「目立った特異な痕跡も証拠もない。 この穴は放っといて発生源を探りに行く」 「発生源って……」 眉を潜める豊田に、顎でしゃくって指し示す。 「ラスボスのところ以外にあるか」  
/765ページ

最初のコメントを投稿しよう!