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「葵は成瀬を捕縛したまま周囲の警戒、本居は詞音についてろ。
起きたら言付けを頼みたいんだが」
「パシリ扱いはごめんよ」
口の減らないというか、空気の読めないというか、何というか。
溜め息混じりに『一旦粘土の補充に戻るように』と内容を本居に伝える。
何だかんだで明らかに操作出来る粘土の量が減っている。
こう言っておけば補充に戻った際に誰かに止められるかも知れないしな。
「葵は半分待機みたいな物だが、豊田にも詞音にも、まして本居じゃ無理なことだ。
くれぐれも突っ走らないようにな」
「はい」
返事までに間がない……
この現状でこの配置は、葵にしか任せられない。
豊田は単純戦力に加えられるタイプじゃないため、もし変えるとすれば俺が残るしかない。
それが分かるからこそ、黙って従った。
「く、くくっ」
葵の下から呻きに似た声がした。
「八坂を《白ウサギ》で無力化たぁ、やってくれるじゃねぇか。
かかっ」
口端を吐いた血で汚しながら、成瀬はにやにやと笑っていた。
葵に貫かれ、身体の自由を奪われながらもその表情に絶望や失望や焦燥が見られない。
逆に、俺の方がざわめく。
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