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『成瀬神楽を締め上げて情報を引き出す』
その選択肢がない訳じゃない。
だが、それでこいつが情報をこぼすかどうか。
真偽は《ピカレスク》の分析能力を応用して嘘発見器にでもかけて?
それでだんまりを決め込まれたら?
費用対効果が割に合わない。
成瀬にこれ以上振り回されても損にしかならない――?
込み上がる欺瞞や鬱憤を飲み下し、代わりに舌打ちを一つ。
「行くぞ豊田。
始めから終わりまで本当にメンドクセー……」
はた、と立ち止まる。
今の成瀬の台詞で思い出した。
八坂は……
「行ってください、先輩。
なんていうかこう……嫌な予感がします」
「あだだだだ……クソ……ッ」
憂さ晴らしとばかりに成瀬の腕を更に締め上げながら、葵が真っ直ぐに瞳を向けてくる。
鋭い目の奥が言い知れぬ不安で濁ってはいるが、それでも俺の背中を押すには充分過ぎた。
「ああ、任せた」
「はい!」
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