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渡り廊下が終わり、再びビルの内部。
俺たちがいたのが『実験棟』、こちら側は……
「『居住棟』」
オルトの地図で確認しようとしたところに、後ろから声。
豊田が息を切らせながら追い付いてきたらしい。
「元々は商業施設が、入る予定だったらしいけど、おれたちは居住区画として、使ってたんだ」
ふうん、と声が漏れる。
言われてみれば、デパートのように間仕切りがされている。
ぽつんぽつんとしっかりした壁で区画分けされているのは誰かが住んでいた痕跡か?
ビルの奥側……渡り廊下の真っ正面の壁面あたりは吹き抜けになっているようだ。
店舗が全てなくなったショッピングモール。
人でごった返しているはずなのに気配すらないのは酷く不気味だ。
そこに響く高質の音。
俺と豊田の視線が急転回して止まる。
床に転がっているのは、スチール缶だった。
俺も飲んだことのあるコーヒーの空き缶。
それがブースからブースへ移動するかのように、カラカラとのたうっている。
缶がひとりでに?ありえない。
風に吹かれて?吹いていないし吹かせてもいない。
豊田を見ると、顔を横に振った。
表情からして嘘は言っていない……
とすれば、いるのは『誰』だ?
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