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「うっ、う……ん?」
ぼんやりとした世界に少しずつ光が差し込む。夢の残滓を振り払い、目を開けると意識は覚醒にむかい急速に色付いて行く。
「 夢? またか」
蝉の大合唱が聞こえた。辺りに充ちる空気は、肌にまとわり付くようにじっとりとして生温い、今が夏真っ盛りなのを否が応でも感じた。
さんさんと降り注いでいるであろう夏の陽が、カーテン越しに部屋を柔らかく照らしている。
目を開ければそこは俺の部屋だ。綺麗に並んだ備え付けの椅子もなければ、薬局と書かれた窓口もない。
小さな洋服箪笥。友人から譲り受けた今にも壊れてしまいそうな古いテレビ。
1LDKの狭い部屋に相応しい、これまた小さなテーブル。いつもの見慣れた俺の部屋だ。
俺はいつ頃からか同じ夢を見続けている。血のように赤い夕日、病院、泣いている少年、いつも同じだ……
最近は眠るのが怖い、眠ってしまえば、またあの夢を見る。あの夢を見る度に現実はその輪郭を溶かし、夢と現実の境界線をぼかしていくようだった。
思い当たることなど何一つないというのに、訳の分からない焦燥感が体を支配する。
「くそっ! 何だってんだよ!」
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