3人が本棚に入れています
本棚に追加
いくら考えたところで答えなど出てこない、抜けない刺のように心に突き刺さり、ちくちくと痛むだけだった。
早くバイトに行けよと、ヒステリックに時計のアラームが喚き立てていた。
「もう、こんな時間か」
アラームを止め、呟く。
たかだか夢を見たくらいで何をしてるんだか。
二十歳から始めた一人暮らしは半年になる、仲の悪い両親から逃げるように家を飛び出て半年。俺は何かを得る事が出来たのだろうか。
寝癖だらけの髪を整えながら、鏡の中の自分に問いかける。見つめ返す顔がやけに幼く見えた。
あの夢はいったい何を伝えようとしているのだろう。
俺は手早く準備を済ませると、玄関を出る。ドアを開けた瞬間にむあっと熱気が体を灼いた。
今日も暑くなりそうだ。
鍵をかけ、そこにかかる表札に目を移せば柳瀬 透という俺の名前がある。
「今日も一日頑張ろうぜ!」
一人気合いを入れ、階段を三段跳ばしで駆け下りると自転車置場にある、自転車の鍵を外した。
最初のコメントを投稿しよう!