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「ッ…!」
雪に絋瑠は片膝をつく。
心配そうに響馬は声をかけた。
「大丈夫か?」
「取り敢えずは…。寝坊したせいで朝飯……食いっぱぐれちまったし…。」
絋瑠は腹部に手をやる。
響馬から絋瑠の表情は見る事が出来ないが、肩で息をしている事から辛いというのは容易に想像する事が出来た。
その時二人は、一体どれだけ自分達が歩いて来たのかがわからなくなっていた。
何とか立ち上がり、再び歩き出した。
雪は止むという事を知らず、ただただ荒れ狂っていた。
ふと、視界が暗くなる。
同時に雪も少し治まったように感じた二人は久方振りに顔を上げる。
そこには巨大な真っ黒な船体があった。
二人は気付かぬうちにその船の影に入ったのだった。
「船…。」
船体にはその船の名前が書いてあるのだが、雪が張り付いているが為に読み取る事は出来なかった。
二人は急いで船体に近づく。
そうして船体を拳で殴りつけた。
僅かな希望を托して。
助けを求めて。
しかし、二人の両手は寒さの為にかじかみ、震え、力は全くと言って良い程入っていなかった。
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