少女ジュリエル

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「…また、殺しちゃった。どうしよう…血の臭いが落ちない、よ…っ…」 本当は、人間を殺したくなんかなかった。 食べもしない命を奪うのなんて、嫌だった。 血の臭いも、人間の断末魔も、痛い事も、みんな嫌い。 バル族とか吸血鬼なんか、大嫌い。 それなのに、みんな私に向かってくる。 そして、それは私を不幸にしてゆく…。 逃げ出したい……、この体からも、現実からも。 バル族と人狼の間に生まれた娘…ただそれだけで、私は…。 「父さん、母さん…、私はいつになったら休めるの?いつになったら幸せになれるの?」 母さんの髪は血のように赤かった。 赤い髪…それは吸血鬼を信仰するバル族である証。 吸血鬼を信仰し、称える。 それがバル族。 しかし母さんは、吸血鬼とは相反する人狼と恋におちた。 その二人から生まれたのが、私。 バル族からすれば、私の存在は邪悪なる者らしい。 あってはならない存在…それが私。 だからずっと、命を狙われ続けてきた。 父も母も、バル族と吸血鬼に殺され……残ったのは私だけ。 逃げだせない苦しみ、絶望。 だけど、死にたくはない…。 「…幸せになってやる。追われ狩られる身であっても、絶対に。追っ手達を殺してでも、絶対に……っ…!」 不幸を引き裂いてでも、幸せになってやる…。 「私が幸せになるためには…」 ああ、そうだ…。 「ヤツラを全部、引き裂いてしまえば良いんだ…」 血が踊る。 血が祭られる。 瞳の色が橙色である事を誇りに思うジュリエル。 しかし、彼女の体は血生臭い赤に染まっている。 end
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