22皿目 二人ぼっちのお留守番

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「で、一人であの森に行くだったわけか」 「だってさ、竜……ぜってえ面倒くさがりそうだし。森に行くって言おうもんなら、馬鹿じゃねえのって一蹴にしそうじゃん。つか、興味なんて一切ありません!って感じだし。そんな竜を俺の身勝手で振り回すっつーのはさ、なんか気が引けるでしょー? ほら、俺って、すげえ気遣いさんだし?」  にんまり、と笑って自分のことを指差す由貴に、竜は呆れたような表情を浮かべると、玄関から降りてスニーカーに足を入れた。  由貴が竜の行動に目を丸くして、呆然と見ていると、竜は由貴の横を通って玄関の扉を開けて外に出た。家の中に太陽の光が差し込む。 「え、竜? 何やってんの?」  由貴が呆然と竜の背中を見ていると、竜は由貴を振り返り、顎を動かして外を指した。 「行くんだろ、昨日の森に」 「え、え、え? 何? 竜も一緒に行ってくれんの?」  竜の言葉に由貴は慌てて玄関を出た。ガチャン、と扉が閉まる音が響く。  竜の、鍵閉めとけよと言う言葉に由貴はポケットに入れていた鍵を取り出して、玄関の扉についている鍵穴に差し込んだ。 「どうせお前一人で行っても、神隠しにあって居なくなりましたってのがオチだろ」  竜に背中を向けて、鍵を閉めている由貴の耳に竜の呆れたような声が届く。  由貴はその言葉に、ひでえ、と笑った。鍵を掛け終えた由貴は、竜の肩に手を置く。 「もー竜ちんったら、一人ぼっちが嫌なら素直にそう言えばいいじゃーん!」 「うぜー」 .
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