24皿目 カンニング岡本

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「この上が、昨日の場所か……」  由貴は竜の隣に立つと、右上を見上げた。傾斜に沿って植物が生えているため、傾斜の上をはっきりと見ることはできなかった。 「じゃあ、ここを登らねえと……って、おい! 竜、どこ行くんだよ」  由貴は右手で頭を掻きながら、眉を顰めて竜の方を振り向くと、竜はすでに由貴の傍から離れて先へ足を進めていた。由貴は慌ててその後を追いかけて、竜を呼び止めた。呼び止められた竜は、緩慢な動作で由貴を振り返ると、口を開いた。 「登る必要はねえよ」 「なんでだよ? 昨日の場所に行くには上に行かねえと」 「俺らが行く場所は、昨日卓也を見下ろした場所でいいのかよ」  竜が右手に持っていた懐中電灯で傾斜の上を指しながらそう言うと、由貴はようやく竜の言いたいことに気が付いたのか、目を見開いて、竜の後ろへと視線を移した。  木々が生い茂り、先にあるもの全てを把握することは不可能であるが、竜と由貴の右側にある傾斜が続いていることだけは、見てとることができた。  竜は視線を由貴から、自分の後ろへと移した。 「昨日、俺らが居た場所から卓也を発見した場所まで、そう距離はなかった。つまり……この先に卓也が倒れていた場所があるってことだろ」  竜と由貴は自然と足が急ぎ、乱暴に草や木の枝を払いながら目指す場所へと進んでいった。二人の右側にある傾斜は進むにつれて、角度を大きくしていく。  辺りに響くのは、ガサガサと道を分け入る音と二人の息遣い、そして、蝉の声。 「ここ、だな」  竜は足を止めると、目の前に広がる光景を眺めた。  後ろからついて来ていた由貴が竜の隣に並んで、その光景を視界に入れると、顔を顰めた。  二人が立ち竦むその先にはどこか異様な光景が広がっていた。
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